Vol.08【LWP002 作り手インタビュー】前編:フルクリップについて

Vol.08【LWP002 作り手インタビュー】前編:フルクリップについて

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ショルダーバッグでありトートバッグでもあるLWP002 X-Pac 30L Shoulder Tote。「X-Pac®(エックスパック)」という軽くて強い素材を採用したことで、さまざまなシーンで使い勝手のよいバッグができあがりました。

 

このバッグの試作から生産までを一手に引き受けてくださったのは、埼玉県三郷市に位置する株式会社アドのオリジナルブランドであるフルクリップです。試作から販売に至るまでの約3年もの長きにわたり、デザイナーの要望に根気強く対応していただいたことによって、LIFEWORKPRODUCTSとして納得のいくものづくりが叶いました。

 

私たちLWP編集部はアド本社にお伺いして、フルクリップが手がけたさまざまな製品や試作づくりの現場を拝見しつつ、LWP002をご担当いただいた平垣亨(ひらがき・とおる)さんにお話を伺いました。

 

まずはフルクリップについて(前編)、次にX-Pacの素材について(中編)、それからLWP002の制作の裏話(後編)について、計3本でお届けします。(前編)

取材・文・イラスト:阿部愛美(LWP編集部)、編集・写真:吉田恵梨子(LWP編集部)
  • 平垣亨(ひらがき・とおる)さん

    株式会社アド フルクリップ事業部 マネージャー兼プロダクトプランナー。自らデザインや構造設計、制作、営業も携わる。画期的なスライダーシステム「ジェットグライド」で特許を取得。趣味は、釣りやマウンテンバイク、筋トレ、観葉植物収集など多岐にわたる。

まずはフルクリップについて教えてください。 

平垣 :
株式会社アドのオリジナルブランドであるフルクリップでは、バッグやポーチなどの製造販売、受注生産を行っています。僕の父である平垣雅美が設立したアドでは、協力工場と連携しながら丁寧な国内縫製にこだわり、サンプル製作から生産までを請け負ってきました。僕の趣味が高じて、ほかにはない特殊な生地を多く取り扱っていることも大きな特徴です。ご依頼いただくのはアパレルブランドがほとんどでしたが、最近はラグジュアリーブランドやアウトドアブランド、スポーツブランドから幅広いご依頼をいただいています。 

フルクリップでは、釣り用のバッグやポーチなどに力を入れていますね。 

平垣 :

釣りは僕の趣味なんです。自分のために釣り針収納ポーチを自作したのですが、それを見た釣り仲間たちからの要望によって製品化したことが、ブランド設立のきっかけでした。ただ勢いづいて作り過ぎてしまい、半年もの間一つも売れないこともあって……。会社からは「もうやめて」と言われつつも諦めきれず、起死回生で作った釣り用バッグをひっさげて釣り番組で宣伝をしたところ、予想外に即完売したんです。それがブランドの大きな転機となり、今では釣り人を中心に認知していただける存在になりました。 

フルクリップの平垣亨さん。

平垣さんは気になる素材を「思わず蒐集してしまう」そうで、フルクリップではさまざまな珍しい生地も多くラインナップしている。  

 

目的の針をすぐに探して取り出せる、フルクリップ定番の釣り針収納ポーチ『PAC2HF(パックツーHF)』。釣り針のパッケージがぴったり収納できる、“ありそうでなかった”ポーチ。   


フルクリップの製品の魅力は使い勝手もさることながら、国内生産にこだわっている点にもあると思います。 

平垣 :

そうですね。新型コロナウイルスの影響によって国内生産に戻そうとする動きはあるものの、すでに国内の工場はわずかしかなく、僕たちのような工場はもはや希少でしょう。アパレルブランドからの依頼を受ける工場の現実は本当に厳しく、体調を崩す職人をたくさん見てきましたし、15~20年ほど前に大手のアパレルメーカーが海外生産に舵を切ったことから国内の生産力は大きく落ち込み、今では数えるほどしかないのが実情です。 

そうした厳しい状況にありながら、フルクリップでは日本縫製にこだわり続けてきたわけですが、日本縫製の強みはどんなところにあるのでしょうか? 

平垣 :

世界的にみて日本の縫製技術は高いとは思いますが、中国やベトナムでは特定のパーツのみを縫う専門の工員がいる完全分業制ですから、縫製技術は卓越しています。では日本縫製の強みは何かというと、「丸縫い」とそれを軸とする体制です。僕らは協力工場と連携して商品を製造していますが、各工場の職人の多くが丸縫いできるのです。 

取材時、社員の方がバッグの試作を作っていた。設計や布の切り出し、組み立てや縫製までひとりで担当できることがフルクリップの強み。 
 

丸縫いとは、分業ではなく、全工程を一人で手掛けるということですね。そこにどんなメリットがあるのでしょうか? 

平垣 :

設計や縫い順に問題がある場合にすぐに気がつくことができて、リスクに対応しやすいことですね。分業制の場合は自分の担当箇所しか把握していないことから、製造におけるミスや異変に気がつくことが難しく、場合によっては大量の不良品を生産する可能性があります。うちの協力工場ではほとんどの職人が丸縫いできますので、そうしたミスは起こりにくいのです。 

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