【LWP001 作り手インタビュー】インタビュー(後編:ものづくりの裏側)

【LWP001 作り手インタビュー】インタビュー(後編:ものづくりの裏側)

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世界最細クラスの糸で作る超軽量生地「KAJIF ULTIMATELIGHT(カジフアルティメットライト)®」を使用して、LWP001のバッグは作られています。この世界最軽量クラスの素材を製造している「カジグループ」にて、バッグ本体の素材提供や全体の縫製をご担当いただきました。

 

私たち編集部は石川県の工場に赴いて、糸の加工と生地の製造工程を取材。途方もない数のパーツからなる機械の驚異的なスピードとは裏腹に、布が織り上がるまでに要する時間の長さに衝撃を受けました。また、工程の要所では人の目で厳しい検品が行われていて、編集部は現場でただただ感嘆するばかり……。

 

工場見学の後に行なったカジレーネ 砂山さんへのインタビューの後半では、LWP デザイナーの南出も参加し、LWP001の製作の裏側についてお話を聞きました。

 

インタビューはこちら。(前編

工場見学はこちらから。(前編中編後編) 

取材・文・イラスト:阿部愛美(LWP編集部)、編集・写真:吉田恵梨子(LWP編集部)
  • 砂山徹也(すなやま・てつや)さん

    カジレーネ TO&FROブランドマネージャー。アパレルブランド店で販売員として勤めた後、2012年からカジナイロンに入社。開発営業課にて1年間は糸の開発業務に携わる。翌13年から発足した自社ブランド「TO&FRO」でマネージャーに任命され、生地を扱うカジレーネに異動。 

  • 南出圭一(みなみで・けいいち)

    「LIFEWORKPRODCTS」デザイナー。国内外のインハウスデザイナーを経て、2016年にアンドデザインに参加。国内外におけるデザイン賞受賞多数。 

 LWP001のバッグに使われている御社の生地「アルティメットライト」の特徴について教えてください。 

砂山 :

世界最細クラスの糸で織り上げた布ですから、究極の軽さと薄さが特徴です。LWP001のバッグには約1×1メートルのアルティメットライトを使用していますが、生地単体の重さはわずか23グラム程度しかありません。 

クレジットカード約4枚程度の重さですね。究極的に軽いということが伝わります。 

砂山 :

薄くて軽いだけでなく、高い強度も自慢です。また、織りの密度が高いために風を通しにくいことや、撥水加工を施した時に高い撥水効果が見込めます。一方で、軽くて薄いために保形性がないことや、生地の色によっては透けやすいことを不便に感じる方もいらっしゃるかもしれません。それくらい薄くて軽い生地なんです。 

初めて触れた時にそのあまりの軽さと薄さ、それに肌に吸い付くようなしなやかさに衝撃を受けました。 

砂山 :

ありがとうございます。アルティメットライトは、自社のトラベルギアブランド「TO&FRO」のオーガナイザーなどに使用しています(※1)が、ナイロン生地特有の“シャカシャカ”した音がしないこともあって人気の生地の一つです。生地ブランド「KAJIF」を2019年に立ち上げてからは、ますます多方面で注目していただいています。一般的に、合成繊維は天然繊維に劣ると考えられがちで、安くて当たり前だと思われることも多いのですが、アルティメットライトを筆頭に合成繊維の魅力をお伝えできるように努めていきたいですね。 

※1……生地ブランド「KAJIF」で販売している「アルティメットライト(ULTIMATE LIGHT)」は、トラベルギアブランド「TO&FRO」では「HUMMING BIRD-AIR-(ハチドリ-air-)」として呼び分けられているが、同じ生地のこと。 
カジレーネの砂山さん。 

 

そんなアルティメットライトを使ったLWP001のバッグについてお話を聞かせてください。南出さんはこのバッグのデザインを手掛けられていますが、この素材を使おうと思ったのはどうしてですか? 

南出 :

薄くて軽い素材を探しているうちに候補の一つとして目をつけたのですが、実際にショールームで触れて即決しました。 

生地だけでなく、バッグの縫製もカジグループにお願いしたそうですね。 

南出 :

実のところ、LWP001の縫製は別の会社にお願いする予定だったのですが、アルティメットライトが薄すぎるせいか試作は難航しました。そこで、アルティメットライトを使った商品の縫製も手がけているカジレーネさんであればと思いたち砂山さんに相談したところ、カジグループの縫製部門でお引き受けいただけることになりました。デザイン上複雑な縫製となり心配していた部分についても「問題ない」というお返事をいただいて、ほんとうに心強かったです。 

LWPデザイナーの南出さん。 
LWP001のバッグ。本体に「アルティメットライト」を使用している。  

 

縫製の難易度が非常に高い生地というわけですね。砂山さん、この“薄すぎる”生地を縫うためには何か特別な道具などが必要なのでしょうか。 

砂山 :

いいえ、機械や糸も一般流通しているものですよ。私たちの縫製チームや協力工場の工員は薄地を縫製する腕を日々磨いてきましたので、取り回しや力の掛け具合など、経験値によるところが大きいですね。それに、糸や針の太さ、針穴のサイズ、押さえの種類、ミシンのスピードやピッチなど、それぞれの組み合わせや機械の設定も私たちのノウハウなんです。たいていは直線を縫うことすら難しい生地だと思います。 

南出さんは、できあがったバッグを見てどう感じましたか。 

南出 :

第一印象はとにかく「縫製がすごく美しい」と感じましたし、全体としてとても納得いく仕上がりでした。僕は綿の生地を使って試作を作っていたのですが、「何かが足りない」と思いつつその理由がずっとわからないままだったんです。でも、仕上がったバッグを見て、パズルの最後のピースがはまるみたいに、アルティメットライトという素材がLWP001のバッグを構成する必要不可欠な一要素だったことに改めて気づきました。 

砂山 :

南出さんが試作を丁寧に作られていましたので私たちもイメージがしやすく、製造工程そのものはスムーズでした。その上で、縫製の難易度などの問題からパーツの交換についてご相談したり、全体のシルエットや強度に影響する部分について縫製方法の変更を提案しながら、お互いに意見を詰めて仕上げていきましたよね。 

そうして、LWP001のバッグができあがったわけですね。このプロジェクトを振り返って、砂山さんはいかがですか。 

砂山 :

私たちとしては、LWP001のバッグに携わったことで、アルティメットライトの新しい可能性が見えたことが大きな収穫となりました。アルティメットライトの自社製品は、トートバッグやオーガナイザー、ウィンドブレーカーなどにとどまっていたのですが、今では、ショルダーバッグやメッセンジャーバッグのほか、新しいシリーズへの展開も想像しています。 

南出 :

今回、究極に軽く、薄い生地に出会えたことで、一つの製品をかたちづくることができました。また、その裏側では多くの手間と時間がかけられていることを再認識し、アルティメットのよさはもちろん、日本のものづくりや繊維の品質の高さについて、LWP001という製品を通じてより多くの方へ伝えていきたいと思いました。ありがとうございました。 

[取材協力]
カジナイロン:石川県金沢市梅田町ハ48/076-258-2255
カジレーネ:石川県かほく市高松ノ75-2/076-281-0118
https://www.kajigroup.co.jp/

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